
「トランスって何ですか?」よくこのような質問を受けます。トランスミュージックと一概に言っても様々なジャンルが確立されており、1980年代から現在に至るまで、進化と融合を経て発展してきました。トランスミュージックを時系列に沿って解説していこうと思います。今回はトランスミュージック誕生前です!
トランスミュージック誕生前
1980年代のダンスミュージックの舞台はアメリカでした。1980年代初頭にシカゴでハウスが誕生。ハウスの語源はシカゴのディスコである「ウェアハウス」が由来とのこと。ハウスの先駆者としては、Larry Levenが挙げられます。Padlock (Larry Levan Mix / Bonus Track)を聴いていただくとわかるように、ディスコの要素を取り入れ、リズミカルなビートとボーカルが特徴でした。
このようなハウスの影響を受け誕生したのはアシッドハウスです。1987年にPhutureの「Acid Tracks」がリリースされたことで始まりました。この曲は1985年に作曲され、シカゴのDJ Ron Hardyが初めてプレイしたとされています。また、2002年に再発見されたCharanjit Singhの1982年のアルバム「Synthesizing: Ten Ragas to a Disco Beat」が、アシッドハウスの初期の例とされることもあります。イギリスでも90年代初頭までアシッドハウスが盛んで、「第二の愛の夏」と呼ばれる平和的な運動が広がりました。TB-303ベースラインシンセサイザーがアシッドハウスの音を定義し、TR-808と組み合わさることで特徴的な電子ドラムサウンドが生まれました。
このようなアシッドハウスのメロディがのちのトランスに影響を及ぼしたとされておりますが、同時期に同じくアメリカで発展を遂げたテクノもトランスに大きな影響を与えたようです。
上述したシカゴハウスの影響を受け、1980年代初頭にデトロイトで発展したテクノは、より機械的で未来的なサウンドを追求したジャンルです。Juan AtkinsやDerrick May、Kevin Saundersonらがデトロイトテクノの起源と言われています。1970年代のヨーロッパのエレクトロ・ポップから影響を受け、KraftwerkやTangerine Dreamのシンセやドラムマシンを取り入れました。また、シカゴ・ハウスのダンスビートやディスコの華やかさを融合させ、独自のサウンドを生み出しました。さらに、アフロ・フューチャリズムを取り入れ、SF的な未来主義を表現し、ヨーロッパの楽器とブラック・アメリカン・スタイルを巧みに結びつけました。
これらのスタイルは、トランスが登場する土壌を作り出したと言われています。
次回はトランスの誕生について解説していきます!